都市の活性化において、都市経営の主体や方法論が昨今議論されている。その中で、中央集権と地方分権、行政セクターと市民セクター、従来型地縁・社縁コミュニティとテーマ型ネットワークコミュニティなど、従来の境界を越えて再編していくことが必要との認識がなされている。新しい活動と空間にはコミュニティが生まれ、重層的な地域コミュニティが大切になるが、自らの地域を経営するための自己責任と自己決定権限を持つための運営の智恵が求められる。これには、社会の推進エンジンである市民の活躍の仕組みが求められ、これら市民力、地域力が、これからの都市の魅力を大きく左右する。
大阪総出で取り組んだ都市プロモーション及び新たな担い手づくりキャンペーンである水都大阪2009は、市民参加、継続継承がテーマになっていた。打ち上げ花火のイベントに終わらないようにするため、市民参加の手法や相互の関係性づくりの工夫、イベント参加した市民が継続的な市民活動を行っていくという大阪で初めての社会実験の場であった。しかし、期間が終了しその後の活動を振り返ると、一部成果は残されたが、その理念はまだ達成されたとは言い難い状況にある。
一方で、全国的にまだ例は少ないが、異なる価値観やアイディアを持つ個人が、他者との相互作用を通じて刺激し合い、「気づき」を起こし、相互の総和にとどまらない新しい価値観や企画を創造し、継続的に地域や人と関わり続けている、というプロセスをていねいに進めている人達がいる。このようなプロセスや状態は「創発」と言われている。
大阪のみでなく関西圏として、各活動主体が自らの主体性を保ちつつ必要に応じて連携することで、全体が活性化することが期待される。相互が刺激し合い新たな価値観や企画を生む創発の場の運営技術を応用することで、都市の新たな担い手となる市民が最大限能力を発揮できる社会を実現させたい。
当調査では、
- ①市民参加の視点を整理し、
- ②水都大阪2009における市民参加の実態を再認識し、
- ③全国・関西の先進事例を研究し、創発の体制づくりや運営方法のポイントや留意点を探り、
- ④大阪におけるモデル提案を行い、
大阪や関西圏の都市活性化に必要不可欠な市民創発の導入の方向性を示すことを目的とする。
- 期 間:2010年12月~2011年3月
- 委託者:関西電力株式会社
- 内 容:
- ①市民参加の視点と水都大阪2009における市民参加の実態
- ②先進事例研究
- ③光のまちづくりにおける基礎情報の整理
- ④まとめと考察